日本民家園・お正月を遊ぶ

2013年1月4日、さして風はなかったが、冷たい大気がただよう寒い一日だった。
帽子をかぶってきて正解だったとホッとしたのもつかの間、肌をつきさす寒さのなか、手袋を忘れてしまった後悔が先にたつ。

今日は、生田緑地の日本民家園で「お正月を遊ぶ」という催しがあった。
 
着物姿の人は入場無料という特典がついていたが、この寒さでは袖口から、襟元から、裾から侵入してくる冷気にたえられそうもない。

会場は「作田家」。
民家園のちょうど中心あたりだが、園内をとおらず他の通路を案内どおり進んでいくと意外にはやく着く。
 

11時から子どもたちを対象とした餅つき体験があり、そこでついた餅を一口餅にして皆に配るということであったが、到着した時はすでに遅し…臼のなかには餅の切れはしもない。
 

おいしそうに食べている人々がたむろしてお喋りと笑いに興じ、いつもと違うお正月を楽しんでいた。
 

作田家は2棟を連ねた分棟型といわれる民家であるが、棟と棟との間に、丸太を縦割りにして中をくりぬいた雨樋がつけられ、2つの屋根をつないでいる。
 

両屋根から流れこむ雨水を受けて外に排出する役目を300年以上も続けてきたこの雨樋は、たくましさすら感じさせる風体で、むき出しのまま屋内に取りつけられている。
頭上にながながと家を横切る大木と生活を共にする家、自然と共存する家…ここは国指定の重要文化財である。

この住宅の特徴は、芸術的ともいえる天井の梁。
本来なら使い物にならないくねくねと曲がった木材が、緻密に算出された強度をそなえ梁として立派に機能している。
さらに美的感覚がつぎこまれて、おおいなる付加価値があたえられた。
 

300年以上の歴史がきざみこまれた梁の一本一本が、囲炉裏の火にいぶされた黒い肢体を自由奔放にはわせている様は、なんとも形容しがたい意志の力を感じさせる。
 

この梁につかわれている木材は、おそらく民家の裏山や持山でそだてたものだろう。
家を建てたり、家具をつくったりするために、裏山に木を植え育てることを必然としていた時代の創意工夫から生まれた芸術といえよう。

さて、この日作田家の軒下には、日本各地のしめ飾りが展示された。
厄や禍をはらう結界(神の居場所をしめす)の意味をもつというしめ飾りは、地域により形が異なる。
 
地域ごとの特殊な事情や、歴史的な意味あいなどから由来する形態ができあがったのだろう。

この家の広い庭では、子どもたちが頬を紅潮させながら昔なつかしいお正月の遊びに興じていた。

一緒に楽しむ父母の姿もはればれしく、笑顔をかがやかせ て我が子の相手をしている。
お正月の代表的な遊びコマ回し、そこには一心にコマに向きあう子どもたちがいた。
回ると大きな歓声!
 

大きいコマは失敗が多い。
何度もなんども紐を巻きなおしながら・・・あきらめないでいつまでも続ける。
 

高度の技術を要するベーゴマの周囲には、高学年の男子が指導を受けていた。
これを回すのは至難の技、成功した子はいなかった。

羽根つきの板は、大人になってから手に取るとけっこう小さい。
こんな板でよくあの小さな羽根を器用についたものだと思いながら、子どもたちを見ていると、やはりうまくいかない。
それでも楽しい、そんな笑顔がこの広場にはあふれていた。
 

孟宗竹を輪切りにした竹馬。
手綱をうまくつかって前進する技はそうたやすく得られるものではない。
踏みはずしたのがおかしくて笑いころげる。
 

室内にはいると、お正月ならではの飾りつけがほどこされ、
折り紙や福笑いに群がる子どもたちが目だったが、お手玉とメンコは忘れられたかのようにひっそりと子どもたちを待っていた。

あやとりは、もっぱらお母さんたち。
指から指へ細い紐を移動させながら記憶のひきだしをさぐっていたが、あんなに長い年月おしえこんだ指さきの記憶が忘却のかなた・・・動きがとまってしまう。さんざん苦労して、やっと「川」と「ハシゴ」ができあがった。

少し変わっていたのは、クジびきに似た五箇山地方の遊び。
白い大きな布に先端をかくした綱を放射状にならべ、子どもたちに反対側の先端を持たせていっせいに引かせる。
 

隠れていた綱の先に当たりの印がついていた子は、お菓子をもらえるというもの。
 

白い大きな布にかくされた白い綱の先・・・引っぱったら何が出てくるのか、異様な目つきで眺めていた子どもたちも最後の最後にお菓子を手にしてやっと笑顔をみせる。

コンピューターが台頭し、その複雑で頭脳的な遊びに取りこまれていく子どもたちの世界にあっては、単純でいかにも素朴な遊び道具は徐々に姿をけしていく。
 

遊びという枠のなかでくり返し、くり返し体験をかさね体得していくことの大切さを知る機会を、現代っ子たちは失ってしまっているのではないだろうか。
 

忘れられた「昔ながらの遊び」の存在意義を確かめあう場を、民家園は提供してくれているような気がする。
 

午後1時半から、獅子舞が作田家をふくむ3軒の民家をまわる悪魔祓いがあった。
「白幡八幡大神平囃子連中」の方々の熱演である。

この催しは大変な人気で人垣ができ、思うように写真が撮れない。
北村家から太田家、作田家へと順次舞台をうつし、テーマの異なる獅子舞が披露された。

お囃子の笛や太鼓・鐘の音が妙になつかしく、子供の頃、地域の民家をくまなく歩き廻る獅子舞のあとを、大人も子どももお囃子に合わせてぞろぞろと付いていった記憶が蘇ってくる。
 

純心で快活な子どもだった。

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