佐藤香展 「月夜乱舞」

生田緑地

この作品は、土を素材にした「土絵」。
水溶性の樹脂で土を溶き、寒冷紗という和紙に描いたもの。
土の重さに堪えうる、かなりしっかりした紙質とみえる。

アーティストの佐藤香さんは福島県出身。
今でも生々しく脳裏によみがえる東北大震災。
多くの命と大切なものを失い復興未だままならぬ地、帰りたくても帰れない人々・・・
和紙に表現された様々な線の描写には、多くの思いが込められているのだろう。

この作品は、市原(千葉)の土を採取することから始まった。
何種類の土を使っているのだろう。
黄から黒にかけての微妙な色合いと明暗が織りなす幽玄な世界。
月夜に乱舞しているのは鳥か蝶か・・・蝶の羽のような模様が美しい。

壁数面に這わせた大きな作品は、福島県の地図と同型のようだ。
福島に生まれ福島に育った彼女の、ふるさとへのまぎれもない愛であろう。

(開催地、千葉県市原市小湊鉄道「養老渓谷駅」より徒歩10分、古民家「あそうバラの谷」)

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