夜の民家園

生田緑地

夜の民家園と船越の舞台 057

2012年10月13日(土)、14日(日)、夜の民家園と称し
午後6時~8時、 宿場・信越の村の夜間公開がおこなわれました。

夜の民家園と船越の舞台 052

宿場エリアには、鈴木家(馬宿)、井岡家(油屋)、『佐地家(武家屋敷の門)、三澤家(薬屋)、信越の村エリアには、合唱づくりで知られる五箇山の古民家江向家山田家野原家、飛騨白川郷の山下家、寄棟づくりの信濃の古民家佐々木家、直径3.6mの車輪をそなえる水車小屋等々が集落をつくっています。

夜の民家園と船越の舞台 073

当日はこの両エリアに灯がともされ、懐かしき古きよき時代の夜景がひろがっていました。

古民家の窓や開けはなたれた間口からもれる灯りは、あたたかく柔らかい光をはなち、建物の輪郭をほのかにうきたたせています。

その古民家の庭々に植えられたススキの群生も、光をあびて金色に輝き、漆黒の空にのびのびと両手をひろげていました。

夜の民家園と船越の舞台 054

通路にはところどころ道案内の照明が地面にひくくおかれ
ここをとおる人々が照らす提灯の灯りと相まって、道ゆく影が右に左にゆらゆらとゆれています。

夜の民家園と船越の舞台 070
夜の民家園と船越の舞台 072

民家の内部では夜なべ仕事をする住人の姿。
わらじづくり・糸つむぎなどが実演され、笑顔でたのしそうな村人たちの姿が再現されていました。

夜の民家園と船越の舞台 066

当時の農家の人々は、昼間は野良しごとに精をだし、もうひと頑ばり疲れた体で夜なべしごと
そんな日々をかさねて家計をやりくりし、一年一年をのりきっていったのでしょう。


夜の民家園と船越の舞台 062


かんばつ台風動物の被害やらを甘んじて受けつつ天をあおいで祈りをささげ
作物をみのらせるその苦労は並大抵のものではありません。
そんな思いをよぎらせながら、器用にうごく手もとに見とれていました。

夜の民家園と船越の舞台 065
夜の民家園と船越の舞台 063
夜の民家園と船越の舞台 069
夜の民家園と船越の舞台 064

宿場エリアにある鈴木家では、万華鏡のむかし話が語られました。同家は200年前の建物で
市にだす馬と馬方が宿泊する宿。土間に12頭の馬をつなぐ馬屋があります。

夜の民家園と船越の舞台 053

さて、敷居をまたぎ土間にはいると、そこは板の間の いろり端、およそ30cm四方の青いうすい座布団をいくつも並べて参加者をむかえいれてくれました。

いろりには火が焚かれ、つるされた鉄鍋からは白い湯気がたって、そこにはすでに「むか~し、むかし・・・」のジジ・ババの息づかいが聞こえてくるような…。

最初のはなしは、旅役者「タノキュウ」
急病の母親のもとに帰る途中、であったウワバミを知恵と勇気でたいじし、大金もちになって母親の病気もなおるという、勧善懲悪の世界を素朴なことばで描写していきます。

もう1つは、方言で語られる「月のひかりでさらさっしゃい 」
もの静かなしっとりとした語り口で、妻の内奥を描き出す大人のための昔ばなし。

語り部のゆったりとした声音に聞きいり、胸の内にポッと温かいほのかな灯りがともって
背中をさすられているようなここちよさを感じながら、むかし話の世界にいざなわれていきました。

夜の民家園と船越の舞台 075
夜の民家園と船越の舞台 068
夜の民家園と船越の舞台 044

佐々木家の庭では、富山県南砺市の伝統芸能保存会の皆さんが唄と踊りを披露してくれました。「合掌づくり集落世界遺産」に登録されている五箇山地方を代表する民謡、麦屋節筑子(こきりこ)です。

五箇山は、庄川ぞいの5つの谷間(五ヶ谷間)にある集落で、これを「ごかやま」と音読するようになり、現在の漢字に転じたようです。

夜の民家園と船越の舞台 045
夜の民家園と船越の舞台 049
夜の民家園と船越の舞台 046

かつては、鳥もかよわぬ陸の孤島といわれ、1年の半分は雪の中のくらしだったとか…そうした環境のなかで育まれ、必然の所産として生じた独自の伝統文化です。

周囲を山にかこまれ閉ざされた村にあって、平家の魂をうけつぐ人々の崇高な精神が文化財たる高みへと昇華させていった芸術的歌舞といえましょう。

麦屋節は、設立100余年という富山県内の民謡団体でもっとも古い歴史をほこる越中五箇山麦屋節保存会の皆さんの唄とおどり。

夜の民家園と船越の舞台 042

夜の民家園と船越の舞台 037

平安後期、壇ノ浦でやぶれた平家の落人がこの五ヶ谷間の山中にのがれ、安住の地としたという歴史的背景…なれない山仕事や農作業の合間に都をしのんで歌いおどったのが始まりのようです。
平家の思いをつたえるその唄とおどりは、凛とした力づよさと哀調をおびた格調たかいものでした。

夜の民家園と船越の舞台 040
夜の民家園と船越の舞台 043

「踊りというより剣舞にちかい…」と棟方志功がいうように、その装束は黒の紋付袴
白のタスキ、腰に杣刀(木製の刀)、手に編笠をもって舞う男性的なおどりです。
国の無形重要文化財に指定されています。

夜の民家園と船越の舞台 059

『筑子(こきりこ)節』は、大化の改新のころ発祥したという日本で一番ふるい民謡です。

夜の民家園と船越の舞台 056

五穀豊穣をいのる田楽から派生し田おどりとして発達したとのこと。

田楽法師とよばれる職業芸能人たちが田うえや稲かりの間に行った踊りだったようです。

国の無形文化財です。

越中五箇山筑子唄保存会の皆さんが、唄とつぎの3種のおどりを披露してくれました。

シデと呼ばれる紙を両端につけた筑子(こきりこ)を手におどる女性のシデ踊り

狩衣(かりぎぬ)に綾藺笠(あやいがさ)をかむっ
た田楽装束の男性がびんざさらを手におどるささら踊り

● 女性の手踊り

平安貴族の装束でもあった豪華な狩衣をまとい、ささらを鳴らして舞う優雅でキレのあるささら踊りは圧巻といえるものでした。

手にしている「びんざさら」は、108枚の竹の板(108つの煩悩をあらわす)を束ねてつくったもので、半円にかまえ波うたせて鳴らしますが、この音がおどり全体をひきしめています。

夜の民家園と船越の舞台 061

女性がおどるシデ踊り手踊りは、流れるようなしなやかな動きにキリッとした品格をそなえ、日本女性のひかえめな美しさを匂わせていました。

多彩な催しが用意されている夜の民家園、おかげで充分たのしめました。
舞踏風景を撮影したかったのですが、フラッシュはマナー違反。これだけが心のこりです。

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